「モデルは見た目が命」。そんな言葉を何度も聞いてきました。でも、撮影現場で本当に求められるのは、実は外見だけではないんです。

カメラの前で自然な表情を作れるか、緊張の中でも自分らしさを表現できるか。そのために必要なのが「心の整え方」でした。

一つの事例として、私の経験をシェアします。

モデル活動をはじめたばかりの20代の頃、撮影前になると緊張してしまい、いつも頭が真っ白になっていました。「うまく撮れなかったらどうしよう」という不安で表情が硬くなり、カメラマンさんからは「もっとリラックスして」とよく言われていました。

でも、その方法が全然わからなかったんです。

そんな時に出会ったのが「マインドフルネス」でした。最初は「瞑想なんて怪しい」と思っていたのですが、撮影前に1分間だけ呼吸に意識を向けてみたところ、驚くほど心が落ち着いたんです。頭の中のざわざわとした不安が静まり、目の前の瞬間に集中できるようになりました。

今、世界中のトップモデルやアーティストたちがマインドフルネスを取り入れています。それは、外見の美しさだけでなく、内面の穏やかさが表現力を高めることを知っているからです。

この記事では、私自身の体験を交えながら、「モデルのように心と体を整えるマインドフルネス実践法」をご紹介します。あなたの日常にも取り入れられる、今すぐ始められる方法をお伝えしていきます。

モデルとマインドフルネスの共通点:今この瞬間に意識を向ける

「モデル マインドフルネス」と検索してこの記事に辿り着いたあなた。マインドフルネスの見方を正しくし、個人の内面に目を向けてください。

マインドフルネスという言葉を聞いたことはあっても、具体的に何を意味するのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。私も最初はそうでした。「瞑想」「禅」「スピリチュアル」といったイメージが先行して、少し距離を感じていたんです。

マインドフルネスとは何か

マインドフルネスとは、簡単に言えば「今この瞬間に、意識的に注意を向けること」です。アメリカで開発されたMBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)というプログラムが有名で、ストレス軽減を目的とした科学的なアプローチとして世界中に広がりました。

このプログラムは、中村悟氏をはじめとする日本の研究者たちによっても紹介されていて、医療機関や企業でも導入が進んでいます。つまり、マインドフルネスは単なるスピリチュアルな概念ではなく、実績のある実践法なんです。

マインドフルネスの本質は、「今」に意識を向けることです。私たちの頭の中は、常に過去の後悔や未来の不安でいっぱいになりがちです。「あの時ああすればよかった」「明日うまくいかなかったらどうしよう」。そんな思考の渦から離れて、「今、この瞬間に何が起きているか」に意識を戻す。それがマインドフルネスの実践です。

モデルの仕事と「瞬間への集中」

実は、モデルの仕事とマインドフルネスには深い共通点があります。それが「瞬間への集中」です。

撮影現場では、カメラのシャッターが切られる一瞬一瞬が勝負です。その瞬間に「昨日の失敗」や「次のポーズ」を考えていたら、自然な表情は生まれません。

今、目の前のカメラに向き合う。

今、自分の体がどう動いているかを感じる。

今、光がどう当たっているかを意識する。

この「今」への集中が、良い写真を生み出すんです。

でも、これが意外と難しい。

私も撮影中に「さっきのポーズ、失敗したかな」「このアングル、変じゃないかな」と考え始めると、表情がどんどん硬くなっていきました。頭の中が余計な思考でいっぱいになって、体も緊張してしまうんです。

「失敗を恐れる自分」を客観視する

マインドフルネスを実践するようになって変わったのが、この「余計な思考」との付き合い方でした。

ある撮影の前、いつものように「失敗したらどうしよう」という不安が湧いてきました。でも、その時に呼吸に意識を向けてみたんです。深く息を吸って、ゆっくり吐く。それを何回か繰り返していると、「あ、今、私は失敗を恐れているんだな」と客観的に気づくことができました。

この「気づき」が大切なんです。不安を感じている自分を、少し離れた場所から眺めるような感覚。これを「メタ認知」と言います。自分の思考や感情を、一歩引いて観察する力です。

不安を無理に消そうとするのではなく、「今、不安を感じているな」と認める。そうすると、不思議なことに不安に飲み込まれなくなります。撮影中も、余計な思考が浮かんできても「あ、また考えてるな」と気づいて、目の前の瞬間に意識を戻せるようになりました。

その結果、カメラマンから「最近、表情が自然になったね」と言われるようになったんです。他人の評価を気にして作った表情ではなく、今この瞬間に集中している自分の、ありのままの表情が撮れるようになったんだと思います。

モデルとして大切なのは、完璧なポーズを取ることではなく、「今、ここにいる」ことを体で表現することなんだと実感しました。そして、それはマインドフルネスの実践そのものだったんです。

マインドフルネスの基本実践法:呼吸・瞑想・ボディスキャン

ひとつずつの実践法についてその意義を意識し、取り組んでみればきっと新しい発見があるはず。

「マインドフルネスって、具体的に何をすればいいの?」という疑問を持つ方も多いと思います。ここでは、私が実際に取り入れている3つの基本的な実践法をご紹介します。どれも特別な道具は必要なく、今日から始められるものばかりです。

1. 呼吸への集中:1分間のリセット法

マインドフルネスの入り口として最も手軽なのが、呼吸への集中です。私たちは普段、呼吸を意識することなく生きていますよね。でも、緊張している時やストレスを感じている時、呼吸は驚くほど浅く速くなっています。

撮影前、鏡の前で自分の顔を見ながら「うまくいくかな」と不安になっている時、意識して呼吸を観察してみてください。きっと、胸だけで浅く呼吸していることに気づくはずです。この浅い呼吸が、緊張のサインなんです。

私が実践しているのは、シンプルな深呼吸です。鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、口から6秒かけて吐く。これを1分間、3回から5回繰り返すだけです。

この時のポイントは、「良い呼吸をしよう」と頑張るのではなく、「今、自分がどう呼吸しているか」を観察することです。息が入ってくる感覚、肺が膨らむ感覚、息が出ていく感覚。それをただ感じる。

撮影前にこの1分間の呼吸をするようになってから、明らかに緊張の質が変わりました。緊張が完全になくなるわけではないのですが、「緊張している自分」を冷静に見られるようになったんです。

2. 瞑想:思考の渦から今に戻る練習

「瞑想」と聞くと、何か特別な儀式のように感じるかもしれません。でも、マインドフルネス瞑想はとてもシンプルです。静かな場所で座り、呼吸に意識を向ける。ただそれだけです。

私は朝、娘を保育園に送り出した後の5分間を瞑想の時間にしています。リビングのソファに座って、目を閉じる。そして呼吸に意識を向けます。

最初は「今日の撮影の準備、あれとあれと…」とすぐに思考が始まります。「夕飯何にしよう」「メールの返信しなきゃ」。頭の中は相変わらず忙しい。でも、それでいいんです。

大切なのは、思考が始まったことに気づいて、また呼吸に意識を戻すこと。この「気づいて戻る」を繰り返すのが瞑想の実践です。思考を完全に止めることが目的ではありません。思考が湧いてきても、「あ、考えてるな」と気づいて、また呼吸に戻る。このプロセス自体がトレーニングなんです。

miliのような企業向けマインドフルネスプログラムでも、この基本的な瞑想法が教えられています。アメリカでも日本でも、多くの参加者がこのシンプルな実践から効果を実感しているんです。

3. ボディスキャン:体の声を聞く

ボディスキャンは、体の各部分に順番に意識を向けていく実践法です。頭のてっぺんから足の先まで、体の感覚を丁寧に観察していきます。

私がこれを初めて体験したのは、MBSRプログラムを紹介している動画を見た時でした。仰向けに寝転んで、ガイドの声に従って体を観察していったのですが、驚いたのは「自分の体の緊張に全く気づいていなかった」ことです。

肩がガチガチに凝っていること、顎に力が入っていること、お腹が緊張していること。言われて初めて気づきました。私たちは、無意識のうちに体のあちこちに緊張を溜め込んでいるんです。

今は、寝る前にベッドの上で簡単なボディスキャンをしています。目を閉じて、頭から順番に注意を向けていく。「今、肩はどんな感じ?」「腰は?」「足は?」と問いかけながら、体の声を聞いていきます。

緊張している部分に気づいたら、そこに呼吸を送るイメージで深呼吸をします。すると、不思議なことに緊張がほぐれていくんです。この実践を続けていると、撮影中も「あ、今肩に力が入ってるな」と気づけるようになり、その場で力を抜けるようになりました。

実践者として大切にしている2つの心構え

これらの実践法を続ける上で、私が大切にしている心構えが2つあります。

一つ目は、「頑張りすぎない」こと。マインドフルネスは努力して何かを成し遂げるものではありません。むしろ、努力を手放して、ただ観察するものです。「完璧な瞑想をしなきゃ」と思うと、それ自体がストレスになってしまいます。

二つ目は、「結果を求めない」こと。「この瞑想で集中力が上がるはず」「ストレスが消えるはず」と期待すると、効果が感じられない時に失望してしまいます。ただ実践する。その積み重ねが、自然と変化をもたらしてくれます。

私の場合、朝のメイク前の3分間、撮影前の1分間など、「この時間はマインドフルネスの時間」とルーティン化しました。特別な時間を作るのではなく、日常の中に溶け込ませることが継続のコツです。

「瞑想=特別な時間」と考えず、「1日数分でOK」という気楽さが、長く続けられる秘訣だと思います。実際、私も最初は5分座っているのが苦痛でしたが、今では自然と体が求める習慣になっています。

マインドフルネスがもたらす効果:集中力・情動・表現力の変化

マインドフルネスの効果について、いろんな人の話を聞いてみるのがおすすめ。自分の中の価値観を育成しよう。

「マインドフルネスって、本当に効果があるの?」そう思う方もいるかもしれません。私も最初は半信半疑でした。でも、実践を続ける中で、確かな変化を感じるようになったんです。ここでは、科学的に実証されている効果と、私自身が体験した変化をお伝えします。

科学的に証明されている3つの効果

マインドフルネスは、単なる気休めではありません。多くの研究によって、その効果が科学的に証明されています。

1. 集中力の向上
マインドフルネスの実践を続けると、注意をコントロールする脳の領域が活性化することが研究で示されています。「気が散る」ことに気づいて、注意を戻す訓練を繰り返すことで、集中力そのものが鍛えられるんです。

私の場合、以前は撮影中に「次のポーズは…」「さっきのカットどうだったかな…」と頭の中がバラバラでした。でも、マインドフルネスを始めてから、目の前の一瞬一瞬に集中できる時間が明らかに長くなりました。

2. 情動コントロールの改善
マインドフルネスは、感情に飲み込まれずに観察する力を育てます。怒りや不安、悲しみといった感情が湧いてきた時、「あ、今こういう感情を感じているんだな」と気づくことで、感情に支配されにくくなるんです。

撮影がうまくいかなかった時、以前なら「私はダメだ」と落ち込んで、その日一日引きずっていました。でも今は、「悔しい気持ちを感じているな」と気づいて、その感情をただ観察できるようになりました。結果として、気持ちの切り替えが早くなったんです。

3. 行動の質(パフォーマンス)の向上
集中力と情動コントロールが改善されることで、結果的に仕事のパフォーマンスも向上します。これは、企業がマインドフルネスプログラムを導入する大きな理由の一つです。

実際、アメリカや日本の多くの企業で、従業員向けのマインドフルネスプログラムが実施されています。参加者からは「仕事の質が上がった」「ミスが減った」という声が多く報告されているそうです。

撮影現場で実感した変化

数字やデータだけでなく、私自身が撮影現場で感じた具体的な変化をお話しします。

以前の私は、カメラマンから「もう一度」と言われるたびに、「やっぱりダメだった」と焦りが増していきました。焦れば焦るほど表情は硬くなり、体も緊張してしまう。悪循環でした。

でも、呼吸に意識を戻す習慣をつけてからは、「もう一度」と言われても冷静でいられるようになりました。「今、焦りを感じているな」と気づいて、深呼吸を一回する。それだけで心が落ち着き、次のシャッターに新鮮な気持ちで臨めるんです。

ある撮影で、カメラマンから「今日は表情がいいね。何か変わった?」と聞かれたことがあります。その時、私は特別なメイクもしていないし、新しいテクニックを使ったわけでもありません。ただ、「今、ここにいる」ことを意識していただけでした。

それを伝えると、カメラマンは「ああ、それだ。目が生きてるんだよ」と言ってくれました。マインドフルネスによって、表面的な「ポーズ」ではなく、内側から湧き出る「表現」ができるようになったんだと実感した瞬間でした。

「外見」から「在り方」へのシフト

モデルの仕事を長く続ける中で気づいたことがあります。それは、本当に魅力的な人は、「何を見せるか」ではなく「どう在るか」で人を惹きつけるということです。

若い頃の私は、「どう見られるか」ばかりを気にしていました。完璧なポーズ、完璧な表情、完璧な体型。でも、そうやって作り上げた「外見」には、どこか空虚さがありました。

マインドフルネスを実践するようになって、視点が変わりました。「どう見せるか」から「今、私はどう感じているか」へ。外側を飾ることから、内側を整えることへ。

撮影現場の空気も変わりました。以前は「早く終わらないかな」「失敗しないように」と緊張していましたが、今は「この瞬間を楽しもう」「今、自分がどう感じているかを表現しよう」と思えるようになったんです。

その結果、写真の質も変わりました。ディレクターから「最近、写真に温かみが出てきたね」と言われることが増えました。技術的なことは何も変えていません。変わったのは、私の「在り方」だけです。

マインドフルネスは、外見を磨くツールではありません。でも、内面を整えることで、自然と外側にも美しさが表れてくる。そんな不思議な効果があるんだと、身をもって体験しています。

モデルに学ぶ”心の姿勢”:マインドフルな生き方を日常に

マインドフルネスな生き方を手にしたとき、その影響が自分を中心とする世界に波及し、大きな変化が生まれるはず。

マインドフルネスは、瞑想の時間だけのものではありません。本当の価値は、日常生活のあらゆる場面に「今、ここ」への意識を広げていくことにあります。モデルとして、そして一人の母親として、私が実践している日常のマインドフルネスをご紹介します。

「モデル」という生き方の本質

モデルという仕事を長く続ける中で、気づいたことがあります。それは、モデルとは単に「商品を見せる人」ではなく、「心の在り方をデザインする人」なんだということです。

カメラの前に立つ時、私たちは商品やブランドの世界観を体現します。でも、その世界観は外側から貼り付けるものではなく、自分の内側から湧き出るものでなければ、見る人の心には届きません。

だからこそ、モデルには「自分の心の状態を整える力」が必要なんです。緊張している時は緊張を認め、楽しい時は素直に楽しむ。そして、必要な時には瞬時に心を切り替える。この柔軟性が、表現力の源になります。

マインドフルネスは、まさにこの「心の柔軟性」を育ててくれる実践法です。そして、これはモデルだけでなく、誰もが日常生活で活かせるスキルなんです。

撮影以外でも役立つ日常のマインドフルネス習慣

私が実践している、特別な時間を取らなくてもできるマインドフルネス習慣をご紹介します。

朝5分の瞑想
一日の始まりに、たった5分だけ座る時間を作っています。娘を保育園に送り出して、家事を始める前のこの時間が、私にとって「心のリセットタイム」です。

ソファに座って、目を閉じて、呼吸を観察する。「今日やることは…」と頭が忙しくなり始めたら、また呼吸に戻る。この5分間があるだけで、一日の質が変わります。焦って一日をスタートするのではなく、落ち着いて、自分の軸を持って一日を始められるんです。

スマホを見ずに歩く通勤時間
撮影場所への移動中、以前はずっとスマホを見ていました。SNSをチェックしたり、メールを確認したり。でも、それでは頭の中が常に「次のこと」でいっぱいになってしまいます。

今は、移動中の10分間だけでも、スマホをバッグにしまって歩くようにしています。周りの景色を見る、風を感じる、足が地面に触れる感覚を感じる。ただ「歩く」という行為に意識を向けるんです。

これは「歩行瞑想」と呼ばれるマインドフルネスの実践法の一つです。特別な時間を作らなくても、移動時間がそのまま瞑想の時間になります。この習慣を始めてから、撮影現場に着いた時の心の状態が全然違うことに気づきました。

食事中の”味わう瞑想”
子育てをしていると、食事の時間もバタバタしてしまいがちです。娘に食べさせながら自分も食べて、気づいたら何を食べたかも覚えていない。そんな日々でした。

でも、最低でも最初の一口だけは、ゆっくり味わうようにしています。口に入れて、噛んで、味や食感を感じる。たった一口でも、丁寧に味わうことで、食事が「ただの作業」から「今を感じる時間」に変わります。

この「味わう瞑想」は、食べ過ぎの防止にも効果的です。ゆっくり味わって食べると、満足感が高まって、自然と適量で満たされるようになるんです。モデルとして体型を維持する上でも、とても役立っています。

「メタ認知」を育てる:自分を客観視する力

日常的にマインドフルネスを実践していると、メタ認知と呼ばれる能力が育っていきます。これは、自分の思考や感情を、一歩引いた視点から観察する力のことです。

例えば、娘がぐずって予定通りに家を出られない朝。以前なら「もう、なんでこんな時に!」とイライラして、娘にきつく当たってしまっていました。そして後で「ひどいお母さんだ」と自己嫌悪に陥る。この繰り返しでした。

でも、マインドフルネスを実践するようになってから、イライラしている自分に「気づける」ようになりました。「あ、今、私はイライラしているな」と。その瞬間、イライラと自分の間に小さな隙間ができるんです。

イライラを感じることは悪いことではありません。人間だから、感情は自然に湧いてきます。大切なのは、その感情に飲み込まれて自動的に反応するのではなく、「今、こういう感情を感じているんだな」と認識して、どう対応するかを選べることです。

メタ認知が育つと、撮影現場でも大きな変化がありました。「緊張している」と気づいたら深呼吸をする、「焦っている」と気づいたら一度立ち止まる。感情に振り回されるのではなく、感情と上手に付き合えるようになったんです。

マインドフルな人とは

マインドフルネスを続けていると、「マインドフルな人」の特徴が見えてきました。それは、自分の感情を正直に見つめ、やさしく扱える人です。

感情を押し殺すのでもなく、感情に飲み込まれるのでもなく。ただ、「今、こう感じているんだな」と認めて、その感情を大切に扱う。自分に対して、友人に接するようなやさしさを持てる人です。

私自身、まだまだ修行中です。イライラする日もあれば、落ち込む日もあります。でも、そんな自分を「ダメだ」と責めるのではなく、「今日はそういう日なんだな」と受け入れられるようになってきました。

この「自分へのやさしさ」は、他人へのやさしさにも繋がります。自分の感情を大切に扱える人は、他人の感情も尊重できる。撮影現場でも、スタッフの方々やモデル仲間との関係が、以前より温かいものになったと感じています。

美しさの根底にある「穏やかさ」

モデルとして多くの人に会ってきましたが、本当に美しい人には共通点があります。それは、内面に穏やかさを持っているということです。

外見は確かに重要です。でも、どんなに整った顔立ちやスタイルを持っていても、内面が荒れていると、その美しさは表面的なものになってしまいます。逆に、内面が穏やかで安定している人は、顔立ちに関係なく、人を惹きつける魅力があるんです。

マインドフルネスは、この「内面の穏やかさ」を育ててくれます。完璧な静けさではありません。波風が立っても、すぐに心を整えられる柔軟性。感情の波に飲み込まれても、また浮き上がれる回復力。そういった心の強さと穏やかさを、少しずつ育ててくれるんです。

注意点:「やってはいけない人」と安全な始め方

マインドフルネスは多くの人にとって有益な実践法ですが、注意が必要な場合もあります。安全に始めるために知っておいてほしいことをお伝えします。

慎重に進めるべき人

マインドフルネス瞑想は、内面に深く意識を向ける実践です。そのため、一部の人にとってはリスクを伴う可能性があります。

トラウマやPTSDを抱えている人
過去に深い心の傷を負っている方は、瞑想中にトラウマの記憶が蘇ってくることがあります。これは「フラッシュバック」と呼ばれる現象で、一人で対処するのは難しい場合があります。

もしトラウマ体験がある方がマインドフルネスに興味を持たれたら、まずは専門のカウンセラーや心療内科医に相談することをおすすめします。トラウマケアに精通した専門家の指導のもとで行う「トラウマインフォームド・マインドフルネス」という方法もあります。

強い不安や抑うつ状態にある人
現在、強い不安や抑うつ症状がある方も、慎重に進める必要があります。瞑想中に症状が悪化したり、ネガティブな思考が増幅されたりすることがあるからです。

精神科や心療内科で治療を受けている方は、必ず担当医に相談してから始めてください。医療機関の中には、認知行動療法の一環として、専門家の指導のもとでマインドフルネスを取り入れているところもあります。

私自身、モデル活動をしていた20代前半、かなり落ち込んでいた時期がありました。その時に無理に瞑想をしようとしたら、かえってネガティブな思考に囚われてしまったことがあります。心の状態によっては、内面に向き合うことが逆効果になることもあるんだと学びました。

無理に内面を掘り下げない

マインドフルネスの目的は、深層心理を掘り下げることではありません。ただ「今、ここ」に意識を向けることです。

瞑想中に辛い記憶や感情が浮かんできたら、無理に向き合おうとせず、呼吸や体の感覚など、より安全な「アンカー(錨)」に意識を戻してください。目を開けて、周りの景色を見たり、体を動かしたりするのも良い方法です。

「この感情と向き合わなければ」と自分を追い込まないこと。マインドフルネスは優しい実践です。自分を責めたり、無理強いしたりするものではありません。

軽いステップから始める

初めてマインドフルネスに取り組む方は、まずは軽いステップから始めることをおすすめします。

呼吸に意識を向ける
最も安全で取り組みやすいのが、呼吸への集中です。1分間だけ、自分の呼吸を観察してみる。これなら、どこでも誰でも始められます。

日常の動作をマインドフルに行う
歩く時に足の感覚を感じる、お茶を飲む時に味や温度を感じる。こういった「日常のマインドフルネス」も効果的です。座って瞑想することに抵抗がある方は、こちらから始めてみてください。

短い時間から始める
いきなり30分も座ろうとすると、苦痛になってしまいます。最初は1分、慣れたら3分、5分と、少しずつ時間を延ばしていきましょう。

日本の専門家とプログラム

日本でも、マインドフルネスの研究と実践が進んでいます。中村悟氏をはじめとする研究者たちが、日本の文脈に合わせたプログラムを開発しています。

企業向けには「mili」のようなプログラムがあり、多くの参加者や受講者が効果を実感しています。また、医療機関でも、MBSRをベースにした日本版プログラムが実施されているところがあります。

もし本格的に学びたいと思われたら、こういった実績のあるプログラムに参加するのも良い選択です。きちんとした指導者のもとで学ぶことで、安全に、そして効果的に実践できます。

目的を見失わない

最後に大切なことを一つ。マインドフルネスの目的は、「静けさを感じること」であって、「何かを変えること」ではありません。

「この瞑想で集中力を上げよう」「ストレスを消そう」と頑張ると、それ自体がストレスになってしまいます。結果を求めず、ただ今この瞬間を感じる。その積み重ねが、自然と変化をもたらしてくれます。

私も最初は「早く効果を出したい」と焦っていました。でも、そういう時ほど、かえって心が乱れていました。「効果なんて出なくてもいい。ただ呼吸を感じよう」と思えるようになった時、不思議なことに、変化が訪れたんです。

実践を続けるコツ:モデルのマインドセットを取り入れる

みなさんはヨガを体験したことがあるだろうか?まだの方は一度体験すると、自身の在り方が形を変える瞬間に触れられるはず。

マインドフルネスは、一度やっただけで劇的に変わるものではありません。継続することで、少しずつ心の質が変化していきます。ここでは、私が実践を続けられている理由とコツをお伝えします。

習慣化のための3つのポイント

1. 時間を固定する
「時間がある時にやろう」と思っていると、いつまでも始められません。私は「朝、娘を送り出した後の5分間」と決めています。

時間を固定することで、それが生活の一部になります。歯を磨くのと同じように、自然な習慣になるまで続けることが大切です。朝が難しければ、夜寝る前でも、お昼休みでも構いません。自分のライフスタイルに合った時間を見つけてください。

2. 完璧さを手放す
「今日は集中できなかった」「雑念ばかりだった」と落ち込む必要はありません。雑念が湧くのは当たり前です。大切なのは、「座った」という事実です。

完璧な瞑想を目指すのではなく、「今日も座れた」と自分を褒めてあげてください。その小さな積み重ねが、大きな変化を生みます。

3. 変化を記録する
私は、瞑想の後に簡単なメモを取るようにしています。「今日は呼吸が深かった」「肩の緊張に気づいた」「イライラしていた」など、ほんの一行でいいんです。

後で読み返すと、自分の変化が見えてきます。「あの頃はこんなことで悩んでいたんだ」「最近は落ち着いているな」と。この「気づき」が、実践を続けるモチベーションになります。

私の実践法:1分間の「今日の呼吸」

撮影が終わった後、更衣室で着替える前に、必ず1分間だけ座る時間を作っています。これを私は「今日の呼吸」と呼んでいます。

目を閉じて、今日一日の体の感覚を観察する。疲れているところはどこか。緊張が残っているところはどこか。そして、深く呼吸をして、その疲れや緊張を呼吸と共に吐き出すイメージをします。

この1分間があることで、仕事モードから日常モードへの切り替えがスムーズになりました。家に帰った時には、「お母さん」としての自分に戻れているんです。

「自分を責めない練習」が一番の効果

マインドフルネスを続けてきて、一番大きな効果だと感じているのが、自分を責めなくなったことです。

以前の私は、完璧主義者でした。撮影でうまくいかないと「私はダメだ」、子育てで余裕がなくなると「母親失格だ」と、常に自分を責めていました。この自己批判が、一番のストレス源だったんです。

マインドフルネスを実践する中で、「失敗した」と思った時に、その思考に気づけるようになりました。「あ、今、自分を責めているな」と。そして、その思考を「本当にそうかな?」と疑問視できるようになったんです。

失敗は失敗。でも、それで自分の価値が下がるわけではない。ただの出来事として受け止めて、次に進めばいい。そう思えるようになってから、心が本当に楽になりました。

マインドフルネスは「観察する」行為

何度も繰り返しになりますが、マインドフルネスは「努力する」ものではなく、「観察する」行為です。

頑張って集中しようとするのではなく、ただ今の自分を観察する。呼吸を観察する、思考を観察する、感情を観察する。ジャッジせず、ただ「あ、そうなんだ」と気づく。

この観察の質が深まると、自分との関係性が変わります。自分を敵だと思わなくなる。自分をコントロールしようとしなくなる。ただ、自分という存在と共にいられるようになるんです。

継続によって増す「内面の透明度」

マインドフルネスを1年以上続けてきて、面白い変化に気づきました。それは、内面の透明度が増したということです。

以前は、自分が何を感じているのか、何を考えているのか、実はよくわかっていませんでした。いつも頭の中がモヤモヤしていて、なぜイライラしているのか、なぜ不安なのか、その理由が見えなかったんです。

でも、マインドフルネスを続けていると、自分の内面が少しずつクリアになってきました。「あ、今、承認されたくて焦っているんだな」「実は、疲れているだけだったんだな」と、自分の本当の気持ちが見えるようになったんです。

この透明度は、モデルとしての表現力にも繋がります。自分の内面が見えている人は、その感情を素直に表現できる。作り物ではない、本物の表情が生まれるんです。

まとめ

ここまで、マインドフルネスについて私の体験を交えながらお伝えしてきました。最後に、大切なポイントをまとめます。

マインドフルネスとは、「今この瞬間に、意識的に注意を向けること」です。アメリカで開発されたMBSRプログラムをはじめ、科学的な実績を持つ実践法として、世界中に広がっています。日本でも、中村悟氏らの研究者や、miliのような企業プログラムを通じて、多くの人々が効果を実感しています。

モデルという仕事は、「今この瞬間への集中」が求められます。カメラの前で、過去の失敗や未来の不安ではなく、目の前の一瞬に意識を向ける。これは、まさにマインドフルネスの実践そのものです。そして、この心の在り方は、日常生活のあらゆる場面で活かすことができます。

基本的な実践法は、呼吸への集中、瞑想、ボディスキャンの3つです。特別な道具や場所は必要ありません。1分間の深呼吸から始められます。大切なのは、完璧を目指すのではなく、ただ観察すること。そして、継続することです。

マインドフルネスがもたらす効果は、集中力の向上、情動コントロールの改善、行動の質の向上など、科学的にも証明されています。私自身も、撮影現場での表現力が自然になり、日常生活でも心が安定するようになりました。「外見を磨く」のではなく、「内面を整える」ことで、自然と美しさが表れてくるんだと実感しています。

ただし、トラウマやPTSDを抱えている方、強い不安や抑うつ状態にある方は、専門家の指導のもとで始めることをおすすめします。無理に内面を掘り下げるのではなく、軽いステップから、自分のペースで進めてください。

継続のコツは、時間を固定すること、完璧さを手放すこと、小さな変化を記録することです。「努力する」のではなく、「観察する」。この視点の転換が、マインドフルネスの本質です。

今日からできること

「マインドフルネス」という言葉を初めて知った方も、もう実践している方も、今日からできることがあります。

  • 深呼吸を一回、意識的にしてみる

  • 食事の最初の一口を、ゆっくり味わってみる

  • 通勤中、1分間だけスマホを見ずに歩いてみる

  • 夜、布団に入ったら、目を閉じて今日の体の感覚を観察してみる

どれも、特別な時間や場所は必要ありません。今、この瞬間から始められることばかりです。

あなたの美しさは、今この瞬間を感じている”心”の中にある

モデルとして、そして一人の女性として、私が伝えたいのはこのことです。

美しさは、外側にあるのではありません。どんなに完璧なメイクをしても、高価な服を着ても、心が乱れていれば、その美しさは表面的なものになってしまいます。

本当の美しさは、内側から湧き出るものです。それは、今この瞬間を丁寧に生きること。自分の感情を大切に扱うこと。他人と比較せず、自分の軸を持つこと。そういった心の在り方から生まれるんです。

マインドフルネスは、その心の在り方を育ててくれる実践法です。完璧な静けさを目指すのではなく、波風が立っても、また心を整えられる柔軟性を育ててくれます。

あなたの中には、すでに美しさがあります。それは、磨くものではなく、気づくものです。今この瞬間に意識を向けた時、その美しさは自然と輝き始めます。

深呼吸を一回。それだけで、あなたのマインドフルネスは始まっています。今日という日を、今この瞬間を、丁寧に感じてみてください。あなたの心が求めている穏やかさは、すぐそこにあります。