「ずっと家にいた私でも大丈夫?」 元専業主婦がモデルを始めたリアル
モデルの相談をくれたのは、ずっと家族を支えてきた友人でした
みなさま、こんにちは。modelic専属ライターの香織です。
現在、小さな娘を育てるママ、フリーランスのライター、副業モデルとして、三足のわらじを履く日々を過ごしています。
そんな私のもとに、ある日、久しぶりに友人から一通のメッセージが届きました。
「香織ちゃん、ちょっと相談していいかな。ずっと専業主婦だったけど、またモデルってできると思う?」
学生時代からの友人である彼女は、学生時代に一時期ともに活動した元モデル仲間です。
彼女は学校を卒業して就職が決まるとともにモデル活動をやめ、社会人として数年間働いた後、結婚をきっかけに専業主婦となる道を選び、家庭に専念してきました。子どもたちも大きくなり、時間に余裕が出てきたタイミングだったようです。
その一言には、外の世界に戻ることへの怖さと同時に、何かに挑戦したいという希望が込められていました。
「場違いじゃないかな」「今さら遅いかな」と不安そうな彼女の気持ちは、手に取るように伝わってきます。
メッセージのやり取りの後、私たちは久しぶりにカフェで会うことにしました。そこで彼女の話をじっくり聞き、私自身の経験や今のモデル業界のことを伝えました。何度かお茶をする中で、彼女の気持ちは少しずつ固まっていったようです。
そして数ヶ月後、彼女は副業モデルとして活動を始めることを決めました。
今回は、そんな彼女が元専業主婦からモデルに挑戦した経験を通して感じたこと、悩んだこと、そして気づいたことをお伝えしたいと思います。
もし、あなたも「やってみたいけど、私なんかが……」と感じているなら、この記事が少しでも背中を押せたら嬉しいです。
元専業主婦がモデルを目指すのは変なこと?

彼女が最初に口にしたのは「場違いじゃないかな」という不安
友人と会って話を聞いたとき、彼女が一番最初に言ったのは「場違いじゃないかな」という言葉でした。
「モデルって、若い子ばかりの世界でしょ? 私みたいに何年もブランクがある専業主婦が今さら始めても、浮いちゃうんじゃないかな」
彼女の中には、モデルという仕事に対する固定観念がありました。
スタイル抜群で、いつも最先端のファッションに身を包んだ若い女性たち。
そんなイメージと、家事や子育てに追われてきた”主婦”という自分の肩書きを比べて、どうしても引け目を感じてしまっていたのです。
「ブランクがある自分に何ができるんだろう」
「”主婦”っていうだけで、相手にされないんじゃないか」
そんな不安が、彼女の心の中でずっとぐるぐると回っていました。
でも、今のモデル業界は少し変わってきている
私はモデル経験者として、そして現在も副業でモデル活動をしている立場から、彼女にこう伝えました。
「実は今、モデル業界って少し変わってきているんだよ」
確かに、ファッション誌の表紙を飾るようなトップモデルの世界は、今も昔も華やかで特別な存在です。でも、モデルという仕事の幅はずっと広がっています。
例えば、ママ向けの広告。子育て世代の女性に向けた商品やサービスのモデルには、リアルな生活感のある女性が求められます。エステサロンやヘアサロンのモデル、読者モデルとして雑誌に登場する一般の女性たち。カバーモデルのような「特別な誰か」ではなく、「身近な誰か」が必要とされる場面は、確実に増えているのです。
実際、私が最近参加した撮影現場では、30代の子育て中のママがモデルとして起用されていました。彼女も元専業主婦ですが、そんなことは全く関係なくプロとしてしっかり仕事をこなしていました。
モデルという仕事は、もはや「若い人だけのもの」ではなくなっています。むしろ、様々な年齢層、様々なバックグラウンドを持つ人が活躍できる時代になってきたのです。
いちばん怖かったのは”仕事”よりも”社会に戻る感覚”

久しぶりに”家庭以外の場所”に立つ不安
友人の話を聞いていて印象的だったのは、彼女が「モデルの仕事そのもの」よりも「家庭以外の場所に出ること」に対して、ずっと大きな不安を抱えていたことでした。
専業主婦として数年間、家庭に専念してきた彼女にとって、外の世界はどこか遠い場所のように感じられていたそうです。
「一度でも専業主婦を経験してしまうと、社会に戻るってことがこんなに怖く感じるなんて思ってなかったよ」と彼女は笑いながら言っていました。家族や近所のママ友とは普通に話せるのに、仕事の場で名刺を渡されたり、自己紹介をしたりする瞬間には、心臓がバクバクしたそうです。
それから、「自分の名前で呼ばれる違和感」もあったと言います。家では「ママ」、子どもの保育園では「〇〇ちゃんのお母さん」。誰かのママとして、誰かの妻として呼ばれることに慣れきっていた彼女は、久しぶりに自分の名前で呼ばれることに、少し照れくささを感じたそうです。
「ちゃんとできるかな」という気持ちは、撮影当日まで消えなかったと言っていました。
彼女が言っていた印象的な言葉
ある日、友人がこんなことを言いました。
「家族の中ではずっと”ママ”だったから、自分の名前で呼ばれるのが照れくさかったんだよね。でも、それってすごく新鮮で、なんだか自分が自分に戻った感じがしたの」
この言葉が、私にはとても印象的でした。
彼女にとって、モデルを始めることは「社会に戻る」という大げさなことではなく、”もう一つの自分の居場所を持つ感覚”だったのです。
家庭の中では母であり妻である自分。でも、家庭の外では一人の女性として、一人のプロとして扱われる場所がある。その二つの居場所を持つことが、彼女にとっての大きな変化だったのだと思います。
日本の社会では、専業主婦という選択をする女性は今も多くいます。総務省の統計によれば、共働き世帯が増えている一方で、専業主婦世帯も一定数存在し、家庭を支える重要な役割を担っています。でも、専業主婦だからといって、外の世界に居場所を持ってはいけないわけではありません。
むしろ、家庭という場所だけに自分を閉じ込めてしまうのではなく、外にも小さな居場所を持つことが、心の余裕や自信につながることもあるのです。
夫に話すのも、大きなハードルだった
「反対されたらどうしよう」が頭から離れなかった
友人が「モデルをやってみたい」と思ったとき、最初の大きなハードルは夫に話すことでした。
「反対されたらどうしよう」という不安が、彼女の頭から離れなかったそうです。
まず、モデルという仕事は収入が保証されていません。レギュラーの仕事があるわけでもなく、撮影が入らなければ収入はゼロ。専業主婦として夫の収入で生活してきた彼女にとって、「収入にならないかもしれないことに時間を使う」ことへの罪悪感がありました。
それに、「家のことはどうするの?」と言われるんじゃないかという想像もありました。今まで家事や子育てをすべて担ってきた彼女が、急に外に出るとなれば、夫の負担も増えるかもしれない。そう思うと、なかなか切り出せなかったそうです。
何度もタイミングを逃しながら、ようやく夕食後のリラックスした時間に、彼女は意を決して切り出しました。
実際に話してみたら、意外な反応だった
「あのさ、ちょっと相談があるんだけど……モデルの仕事、やってみたいんだよね」
緊張しながら伝えた彼女に、夫は少し驚いた顔をしたそうです。でも、すぐに笑顔になって、こう言ってくれました。
「え、いいじゃん! やってみたらいいと思うよ。というか、前からまた何かやりたいって言ってたもんね」
拍子抜けするほど、温かい反応だったそうです。
夫は続けて、「でも、いきなり全部一人で背負い込まないでね」と言いました。
「俺も家事手伝うし、子どものことも一緒にやるから。ただ、撮影の日とかは早めに教えてくれたら助かるかな。あと、子どもが熱出したりしたときは、やっぱりママがいた方が安心すると思うから、そこは優先で」
彼女が一番嬉しかったのは、夫が「許可する」という上から目線ではなく、「一緒に考えよう」という姿勢で向き合ってくれたことでした。
二人で話し合って決めた条件は、こんな感じだったそうです。
- 子ども優先:撮影があっても、子どもの体調不良や行事があれば、そちらを最優先する
- 家事は分担で調整:撮影がある日は夫が夕飯を作る、洗濯は前日にまとめてやっておくなど、お互いに無理のない範囲で分担
- スケジュールは共有:撮影日が決まったら、できるだけ早めにカレンダーに入れて、家族全員が把握できるようにする
「反対されるかもって思ってたけど、『頑張ってみなよ』って応援してくれて、すごく安心した」と彼女は話していました。
夫も、専業主婦として家族を支えてくれていた妻が、自分のやりたいことに挑戦する姿を見て、「俺も家のことちゃんとやらないとな」と改めて思ったそうです。
友人は「許可をもらった」というより、「夫婦で一緒に道を作った」という感覚だったと言います。そのプロセスがあったからこそ、彼女は安心して一歩を踏み出すことができたのです。
元専業主婦だからこそ感じた戸惑い

時間の使い方がわからなくなった
実際にモデルの仕事を始めてみて、友人が最初に戸惑ったのは「時間の使い方」でした。
専業主婦として家庭中心の生活リズムで過ごしてきた彼女にとって、急に「自分の準備に時間を使う」ことは、思った以上に難しかったそうです。
撮影前日には髪を整え、肌のコンディションを整え、当日の服装を考える。朝は早めに起きて、メイクをしっかりする。これまでは子どもたちの準備を優先し、自分のことは後回しにしてきた彼女にとって、自分のために時間を使うことに少し罪悪感がありました。
「こんなに時間をかけて準備していいのかな」「その時間があるなら、家のことをやらなきゃいけないんじゃないか」
そんな気持ちが、どうしても頭をよぎってしまったそうです。
見た目への自信のなさ
それから、見た目への自信のなさも大きな壁でした。
何年も「ママ目線」の服装で過ごしてきた彼女は、動きやすさや汚れにくさを重視した服ばかりを選んでいました。おしゃれをする機会も減り、鏡を見る時間も減っていました。
さらに、出産を経て体型も変化していました。以前のようなスタイルではない自分を見て、「こんな体でモデルなんてできるのかな」と不安になったこともあったそうです。
でも、彼女はこう言っていました。
「完璧じゃなくていいって、現場の人が言ってくれたんだよね。むしろ、リアルな体型の方が共感されやすいって」
それでも一歩踏み出せた理由
それでも彼女が一歩踏み出せた理由は、二つありました。
一つは、子どもに「やりたいことをやっていい」と言いたかったから。
娘が大きくなったとき、「ママは我慢ばかりしていた」と思われたくなかったそうです。やりたいことがあるなら挑戦していい、失敗してもいい。そんな姿を見せることが、子どもへのメッセージになると思ったのです。
もう一つは、家庭以外の場所でも必要とされたかったから。
家族にとって自分は必要な存在です。でも、家庭という枠を超えて、誰かに必要とされる経験がしたかった。仕事として、プロとして求められる感覚を、もう一度味わいたかったのです。
実際に始めてみて、彼女が一番驚いたこと

「思っていたより”普通の人”が多かった」
実際にモデルの現場に行ってみて、友人が一番驚いたのは「思っていたより”普通の人”が多かった」ことだそうです。
モデル=特別な世界、というイメージを持っていた彼女でしたが、実際には同じように子育て中の人もいたし、パート主婦として働きながら副業でモデルをしている人もいました。
「みんな、すごく気さくで優しかったんだよね。『私も最初は緊張したよ』って声をかけてくれる人もいて、安心した」と彼女は言っていました。
現場で求められたのは、特別なスキルや完璧な容姿ではなく、自然体でした。作り込んだ笑顔よりも、リラックスした表情。ポーズを決めることよりも、自然な動きや仕草。
「ありのままの自分でいいんだ」と思えたことが、彼女にとって大きな自信につながったそうです。
家族との関係も少し変わった
実際にモデルの仕事を始めてから、友人が驚いたのは家族との関係にも変化があったことでした。
夫は、最初の撮影が終わった日の夜、「今日どうだった?」と興味津々で聞いてくれたそうです。撮影の様子や現場の雰囲気、どんな人がいたかなど、彼女の話を楽しそうに聞いてくれました。
「なんか、久しぶりに夫婦で”仕事の話”をした気がしたんだよね。私も、家のこと以外の話題ができて、すごく新鮮だった」
それから、撮影の写真がとあるサロンのHPに掲載されたときには、夫が「すごいじゃん!」と本気で喜んでくれたそうです。友人にLINEで写真を送って、「うちの奥さん、モデルやってんだよ」と自慢していたとか。
娘さんも、ママが撮影に行く日には「ママ、きれいになってね」と言ってくれるようになりました。撮影から帰ってくると、「ママかわいかった?」と聞いてきて、写真を見せると「ママすごーい!」と目をキラキラさせて喜んでくれるそうです。
「子どもに『ママかわいい』って言われたのが、一番嬉しかったかもしれない」と友人は照れくさそうに笑っていました。
家族が応援してくれる。それが、彼女にとって何よりの原動力になったのです。
元専業主婦がモデルを始めるメリット・デメリット
友人の経験を通して見えてきた、元専業主婦がモデルを始めることのメリットとデメリットをまとめてみたいと思います。
メリット
自分に自信が戻る
まず、一番大きなメリットは自分に自信が戻ることです。
友人は「鏡を見るのが楽しくなった」と言っていました。撮影のために肌や髪の毛をケアするようになり、自分の見た目に少しずつ気を使うようになったそうです。
「ママ」としてではなく、一人の女性として扱われる時間があることで、自分自身を大切にする気持ちが戻ってきたのです。
家庭以外の居場所ができる
それから、家庭以外の居場所ができたことも大きな変化でした。
家にいるときは母であり妻である自分。でも、撮影現場では一人のプロとして扱われる。その切り替えが、彼女にとってはとても心地よかったそうです。
「家だけが全てじゃないって思えるようになった。外に居場所があるって、こんなに気持ちが軽くなるんだなって」
新しい人との出会い
モデルの仕事を通して、新しい人との出会いもありました。
カメラマン、スタイリスト、他のモデル仲間。同じように子育てをしながら働いている人や、全く違う業界から転身してきた人など、様々なバックグラウンドを持つ人たちとの出会いが、彼女の世界を広げてくれました。
「ママ友以外の友達ができたのも、すごく嬉しかった」と友人は言っていました。
デメリット
もちろん、良いことばかりではありません。デメリットもしっかりお伝えしておきます。
収入は安定しない
まず、モデルの仕事は収入が安定しないことです。
撮影が入らない月もあれば、立て続けに仕事が入る月もある。友人の場合、最初の数ヶ月は月に1〜2回の撮影があれば良い方でした。
「パート主婦として働いた方が、確実に収入になるのは事実だよね」と彼女も認めていました。
ただ、彼女にとっては収入よりも「自分がやりたいことに挑戦している」という実感の方が大きかったそうです。
体力的に大変
それから、体力的に大変なこともあります。
撮影は数時間に及ぶこともあり、立ちっぱなしや同じポーズを何度も繰り返すことで、思った以上に疲れます。家に帰ってからも家事や子育てがあるので、撮影の日は本当にヘトヘトになるそうです。
「次の日、筋肉痛になったこともあったよ」と友人は笑っていました。
家族との調整は必須
そして、家族との調整は必須です。
撮影のスケジュールが急に入ったり、時間が延びたりすることもあります。そのたびに夫と連絡を取り合い、子どものお迎えや夕飯の準備をどうするか調整しなければなりません。
「最初は『こんなに大変なら無理かも』って思ったこともあった。でも、夫が協力してくれるから続けられてる」
家族の理解と協力なしには、続けられない仕事だということを、彼女は実感しているそうです。
元専業主婦でも、外の世界に居場所を作っていい
友人と話していて、私が一番感じたことがあります。
それは、彼女は特別な人ではなかったということです。この感覚は、私がモデル活動を再開した時にも抱いた感覚でした。
特別なスキルがあったわけでも、特別な美貌があったわけでもありません。ただ「やってみたい」と口にして、一歩を踏み出しただけです。
外に出るのは怖かったそうです。でも、その怖さはゼロにはなりませんでした。それでも、少しの勇気を持って扉を開けてみたら、思っていたよりも温かい世界が待っていたのです。
モデルになることがゴールじゃなくてもいい
友人はこう言っていました。
「別に、トップモデルになりたいわけじゃないんだよね。ただ、自分の名前で呼ばれる場所があるっていうのが、すごく嬉しいの」
モデルという肩書きや、華やかな仕事内容が彼女にとって重要なのではなく、“自分の名前で呼ばれる場所”を持てたことが、彼女にとっての大きな変化でした。
専業主婦として家族を支えることは、とても尊い仕事です。日本の社会において、専業主婦世帯は今も重要な役割を果たしています。でも、専業主婦だからといって、自分のやりたいことを諦める必要はありません。
家庭という居場所を大切にしながら、外にもう一つ小さな居場所を持つこと。それは、決して贅沢なことでも、わがままなことでもないのです。
もし少しでも「やってみたい」があるなら
この記事を読んでくださっているあなたの中に、もし少しでも「やってみたい」という気持ちがあるなら、それはもう十分な理由です。
「でも、私なんて……」と思う必要はありません。
友人も、最初はそう思っていました。でも、一歩踏み出してみたら、思っていたよりもずっと優しい世界が待っていたのです。
モデルである必要はありません。仕事である必要もありません。
趣味でも、ボランティアでも、何でもいい。家庭の外に、自分の名前で呼ばれる場所を一つ持つこと。それだけで、毎日が少し変わるかもしれません。
私自身も、子育てをしながら副業でモデルを再開して感じることがあります。それは、複数の居場所を持つことが、心の余裕につながるということです。
ライターとして、母として、妻として、そしてモデルとして。いくつもの顔を持つことで、一つの場所でうまくいかなくても、他の場所があるという安心感が生まれます。
友人は今も、月に数回のペースでモデルの仕事を続けています。
「これからも続けられるかはわからない。でも、今はこの生活がすごく楽しいんだよね」
そう言う彼女の顔は、以前よりもずっと生き生きとしていました。
元専業主婦だった彼女が、外の世界に小さな居場所を見つけた。それだけのことかもしれませんが、その小さな変化が、彼女の人生を少しだけ豊かにしてくれたのだと思います。
もしあなたも、何か始めてみたいことがあるなら。
その気持ちを、どうか大切にしてください。
一歩踏み出すのは怖いかもしれません。
でも、その一歩の先には、きっと新しい景色が待っています。
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