初めての撮影現場。スタジオに足を踏み入れた瞬間、緊張で胸がドキドキして、何をどうすればいいのかわからない――。そんな不安を抱える新人モデルの方は、きっと多いと思います。
私自身、大学生の頃に芸能事務所に所属し、モデルとして活動していた経験があります。最初の撮影現場では、カメラマンやスタッフの方々に囲まれて、どこに立てばいいのか、どんな風に挨拶すればいいのか、本当にわからないことだらけでした。でも、現場を重ねるうちに気づいたことがあります。それは、撮影現場で求められるのは、容姿や技術以上に「この人と一緒に仕事をしたい」「信頼できる」と思ってもらえる行動だということです。
芸能界やファッション業界は、想像以上に狭い世界です。一度「マナーがなっていない」と思われてしまうと、次の仕事につながらないかもしれません。逆に、基本的なマナーをしっかり守り、現場の空気を読んで動けるモデルは、技術が未熟でも「また呼びたい」と思ってもらえるのです。
今は編集者としてフリーランスで活動しながら、副業でエステサロンやアパレルブランドの撮影モデルもしている私だからこそ、現場の両側から見えてくる「モデル 現場 マナー」の大切さがあります。本記事では、撮影現場で求められる基本マナーや、プロとして信頼される心構えを、私の経験をもとに丁寧にお伝えしていきます。
モデルの現場マナーとは?

モデルとして撮影現場に立つとき、「自分がどう見られるか」ばかりを気にしていませんか?もちろん、カメラの前で魅力的に映ることは大切です。でも、それ以上に現場で評価されるのは、実は「人としての振る舞い」なんです。
撮影現場は「チームで作る作品の場」
撮影現場では、モデルは決して主役ではありません。カメラマン、ディレクター、スタイリスト、ヘアメイク、照明スタッフ、そしてクライアント――たくさんのプロフェッショナルが集まって、一つの作品を作り上げているのです。モデルはその「チームの一員」として、全体の流れを止めずに、柔軟に対応することが求められます。
私がモデルとして活動していた頃、ある撮影現場でこんなことがありました。照明の調整が予定より長引いてしまい、撮影開始が遅れたことがあったんです。そのとき、ベテランのモデルさんが「大丈夫ですよ、ゆっくりで」と笑顔で声をかけていて、現場の空気が一気に和らいだのを覚えています。現場の空気を読む力、焦らず柔軟に対応する姿勢が、プロとして評価されるポイントなんだと実感しました。
撮影の仕事は、自分一人では成り立ちません。現場にいる全員が気持ちよく仕事を進められるように、周囲への配慮を忘れずにいることが大切です。
芸能界で求められる「信頼される人」になる
モデルのマナーは、単なる礼儀作法ではありません。それは「次の仕事につながる信用」そのものです。芸能界やファッション業界では、スキルや経験がまだ浅くても、「この人はマナーがしっかりしている」「現場で気持ちよく仕事ができる」と思ってもらえれば、次のオーディションや撮影に声がかかる可能性が高くなります。
挨拶、時間厳守、気配り――これらはすべて「この人と仕事をしたい」と思ってもらえるかどうかの評価対象です。特に新人モデルのうちは、技術や経験では勝負できないことも多いでしょう。だからこそ、「当たり前のことを丁寧にやる」ことが何よりも重要なんです。
私も最初の頃は、撮影が終わったあとにスタッフ全員に「ありがとうございました」と挨拶して回るようにしていました。些細なことかもしれませんが、そうした積み重ねが「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるきっかけになったと感じています。芸能事務所のマネージャーからも、「香織ちゃんは現場での評判がいいから、次の仕事が決まりやすいよ」と言われたことがあり、マナーの大切さを改めて実感しました。
信頼は一日で築けるものではありません。でも、毎回の撮影で丁寧に、誠実に向き合っていけば、必ず周囲の人に伝わります。そして、それが次のチャンスにつながっていくのです。
撮影現場での基本マナー5選

それでは、具体的に撮影現場でどんなマナーを守ればいいのか、基本的なポイントを5つご紹介します。どれも当たり前のように感じるかもしれませんが、この「当たり前」ができるかどうかが、プロとして評価されるかどうかの分かれ目になります。
① 挨拶と笑顔はすべての基本
撮影現場に入ったら、まずは「おはようございます」からスタートです。これは、どんな時間帯の撮影でも変わりません。カメラマンはもちろん、スタイリスト、ヘアメイク、照明スタッフ、クライアントの方々――現場にいるすべての人に、軽く会釈をしながら挨拶をしましょう。
「そんなこと?」と思うかもしれませんが、この挨拶一つで第一印象が大きく変わります。笑顔で挨拶をするだけで、「この子は感じがいいな」と思ってもらえますし、撮影全体の空気が和らぎます。逆に、無表情で挨拶もそこそこに現場入りしてしまうと、「やる気がないのかな」「コミュニケーションが取りにくそう」と思われてしまうかもしれません。
私がモデルをしていた頃、とあるアパレルブランドの撮影で、朝一番に現場入りした際に、照明を調整していたスタッフの方にも笑顔で挨拶をしたことがありました。その方は後から「ちゃんと挨拶してくれて嬉しかった」と言ってくださり、撮影中も積極的に声をかけてくれたんです。小さなことですが、こうした気配りが現場の雰囲気を良くし、結果として自分も気持ちよく仕事ができることにつながります。
挨拶は「おまじない」のようなものです。撮影が始まる前に、自分の緊張をほぐし、周囲との呼吸を合わせるための大切な一歩だと思ってください。
② 遅刻・ドタキャンは絶対NG
撮影現場では、「5分前行動」がプロとしての最低ラインです。むしろ、10分前には現場に到着して、余裕を持って準備を整えておくのが理想的です。遅刻やドタキャンは、どんな理由があっても信用を失う行為です。
撮影は、多くの人のスケジュールを調整して成り立っています。カメラマンもスタッフもクライアントも、その日その時間に合わせて動いています。一人が遅れるだけで、全体のスケジュールが狂い、他の人の仕事にも影響が出てしまいます。特にスタジオ撮影の場合、時間単位で場所を借りていることが多いため、遅刻によって撮影時間が圧迫されると、クライアントにも迷惑がかかります。
天候や電車の遅延など、予期せぬトラブルもあるでしょう。だからこそ、前日から余裕を持って準備をしておくことが大切です。撮影場所への行き方を事前に確認し、当日は早めに家を出る。もし万が一遅れそうになったら、わかった時点ですぐに連絡を入れましょう。「今電車が遅れていて、到着が10分ほど遅れそうです」と一報入れるだけで、現場の印象は大きく変わります。
私も以前、雪で電車が大幅に遅れたことがありました。その時は、遅延がわかった瞬間にマネージャーと撮影担当者に連絡を入れ、状況を細かく報告しました。結果的に到着は遅れましたが、「ちゃんと連絡してくれたから助かった」と言っていただけました。逆に、何の連絡もなく遅れてしまうと、現場は不安になりますし、信頼を失ってしまいます。
時間を守ることは、プロとして最も基本的なマナーです。どんなに素晴らしいスキルを持っていても、時間にルーズな人とは一緒に仕事をしたくないと思われてしまいます。
③ スマホ・SNSの扱いに注意
撮影現場では、スマホの扱いに十分注意が必要です。特に、撮影風景を無断で撮影してSNSに投稿するのは絶対にNGです。クライアントの商品や、まだ公開されていない企画内容が写ってしまうと、大きなトラブルになります。
撮影現場には、企業秘密や未発表の情報がたくさんあります。新商品の撮影や、雑誌の企画撮影など、まだ世の中に出ていない情報を扱っていることが多いのです。そのため、写真を撮る場合は必ず「撮影してもいいですか?」と確認し、SNSに投稿する場合も「投稿しても大丈夫ですか?」と許可を取るようにしましょう。
また、撮影中はスマホをカメラバッグやロッカーにしまっておくのがベターです。待ち時間にスマホをいじっていると、「集中していない」「やる気がない」と思われてしまう可能性があります。撮影現場では、常に「次は自分の番かもしれない」という意識を持って、周囲の動きを見ておくことが大切です。
私が編集者として撮影現場に立ち会うようになってから、改めて感じるのは「スマホに気を取られているモデルさんは、チャンスを逃している」ということです。現場では、急に「ちょっとこのポーズ試してみて」と声がかかることもあります。その時にスマホを見ていると、せっかくのチャンスを逃してしまいます。
SNSは便利なツールですが、使い方を間違えると信用を失います。現場では、スマホよりも「今、目の前で起きていること」に集中しましょう。
④ 自分の荷物・立ち位置を意識する
撮影現場では、限られたスペースを多くの人が共有しています。メイクルームやスタジオでは、自分の荷物が場所を取りすぎないように注意しましょう。整理整頓を心がけ、スタイリストやヘアメイクの方々の動線を邪魔しないことが大切です。
私がモデルをしていた頃、メイクルームで荷物を広げすぎて、他のモデルさんのスペースを圧迫してしまったことがあります。その時、スタイリストの方から優しく「ちょっと荷物をまとめてもらえるかな」と言われ、とても恥ずかしい思いをしました。それ以来、現場では必要最低限の荷物だけを出し、使ったものはすぐに片付けるように心がけています。
また、撮影中の立ち位置にも気を配りましょう。自分の撮影が終わったら、カメラマンの視界を遮らない場所に移動する。照明の調整中は、スタッフの邪魔にならないように少し離れた場所で待機する。こうした細かな気配りが、現場での評価につながります。
自分の小物や衣装も、丁寧に扱いましょう。特にブランドから借りている衣装は、クライアントの大切な商品です。雑に扱ってしまうと、ブランドへの敬意が足りないと思われてしまいます。着替える時も、床に置かずにハンガーにかける、靴も揃えて置くなど、基本的なマナーを守りましょう。
現場での立ち振る舞いは、すべて「この人はプロ意識があるか」を測る材料になります。自分のスペースを意識し、周囲への配慮を忘れないようにしましょう。
⑤ クライアント・スタッフへの感謝を忘れずに
撮影が終わったら、必ず「ありがとうございました」と感謝の言葉を伝えましょう。カメラマン、ディレクター、スタイリスト、ヘアメイク、照明スタッフ、そしてクライアントの方々――関わってくださった全員に、きちんと挨拶をして帰ることが大切です。
「お疲れ様でした」だけでなく、「今日は素敵な写真を撮っていただいて、ありがとうございました」「勉強になりました」など、具体的な感謝の言葉を添えると、より印象が良くなります。特に、初めて一緒に仕事をする方には、丁寧に挨拶をしておくと、次の仕事につながりやすくなります。
SNSで撮影の様子を投稿する際も、ブランド名や関係者への配慮を忘れずに。「〇〇様の撮影に参加させていただきました。素敵な現場をありがとうございました」といった形で、感謝の気持ちを表現すると、クライアントからも好印象を持ってもらえます。ただし、投稿前には必ず許可を取ることを忘れずに。
私も副業でモデルをする際には、撮影後に必ずクライアントやカメラマンの方にメッセージを送るようにしています。「今日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。またご一緒できる日を楽しみにしています」といった一言を添えるだけで、次の仕事に声をかけてもらえることが多いんです。
感謝の気持ちを伝えることは、人として当たり前のことです。でも、その当たり前ができているかどうかで、プロとしての評価が大きく変わります。撮影が終わっても、最後まで気を抜かずに、丁寧に現場を後にしましょう。
現場で信頼されるモデルの行動

基本的なマナーを守ることはもちろん大切ですが、それだけでは「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらうには十分ではありません。ここからは、現場で信頼され、次の仕事につながるモデルになるための、もう一歩踏み込んだ行動についてお話しします。
カメラマンやディレクターとのコミュニケーション
撮影現場では、カメラマンやディレクターからの指示を正確に理解し、柔軟に対応することが求められます。指示を聞くときは、相手の目を見てしっかりと聞きましょう。「はい、わかりました」と返事をするだけでなく、「こんな感じでしょうか?」と確認しながら進めると、より良い撮影につながります。
表情やポーズのリクエストには、できるだけ柔軟に応じることが大切です。「もう少し笑顔で」「視線をカメラから外して」といった指示に対して、素直に対応できるモデルは、現場で重宝されます。もし指示の意図がわからなかったら、遠慮せずに「もう少し具体的に教えていただけますか?」と質問しましょう。わからないまま進めてしまうより、確認してから正確に対応する方が、はるかに評価されます。
また、意見を求められたときには、素直に自分の考えを伝えることも大切です。「このポーズ、どう思う?」と聞かれたら、「こうした方が動きが出るかもしれません」といった提案をしてみましょう。ただし、押し付けるのではなく、あくまで「提案」として伝えることがポイントです。
私がモデルをしていた頃、あるカメラマンから「指示を理解するのが早いし、こちらの意図を汲んでくれるから撮りやすい」と言っていただいたことがあります。コミュニケーションがスムーズだと、撮影のテンポも良くなり、結果として良い写真が撮れるんです。
現場は「対話」の場です。一方的に指示を受けるだけでなく、カメラマンやディレクターと呼吸を合わせながら、一緒に作品を作り上げていく意識を持ちましょう。
「プロ意識」を感じさせる小さな習慣
プロのモデルとして信頼されるためには、撮影中の細かな習慣も大切です。撮影の合間には、鏡で自分の表情や姿勢をチェックする習慣をつけましょう。髪が乱れていないか、メイクが崩れていないか、姿勢が崩れていないか――こうした細かな部分に気を配ることが、プロ意識の表れです。
衣装やヘアメイクを崩さないように意識することも重要です。撮影中に何度も衣装を直してもらったり、ヘアメイクを直してもらったりするのは、スタイリストやヘアメイクの方々に負担をかけてしまいます。自分でできる範囲で気をつけることで、現場全体の効率が上がります。
また、体調管理も撮影の一部です。前日はしっかり睡眠を取り、撮影当日は適度に水分補給をしましょう。特に長時間の撮影では、体調が崩れてしまうと仕事になりません。私も撮影前日は必ず早めに就寝し、当日は軽めの食事を取るようにしています。体調が万全だと、表情も自然と明るくなりますし、集中力も続きます。
こうした小さな習慣の積み重ねが、「この人はプロだな」と思ってもらえるポイントになります。誰も見ていないところでの気配りこそが、信頼につながるのです。
現場の「空気を読む力」がチャンスを広げる
撮影現場では、スピード感とチームワークが求められます。自分の撮影が終わっても、他のモデルの撮影中にどう振る舞うかが、プロとしての評価を左右します。黙って突っ立っているのではなく、「はい」「わかりました」と反応を返したり、必要に応じて動いたりすることが大切です。
「自分の番ではないとき」の立ち振る舞いが、実はプロを分けるポイントなんです。他のモデルが撮影している間も、現場の流れを見て、次に何が必要かを予測する。スタッフが忙しそうにしていたら、「何かお手伝いできることはありますか?」と声をかける。こうした気配りができるモデルは、間違いなく次の仕事につながります。
私が編集者として現場に立ち会っていて感じるのは、「空気を読める人」は本当に重宝されるということです。撮影がスムーズに進むと、クライアントもスタッフも満足し、「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらえます。逆に、自分のことしか考えていない人は、どんなに見た目が良くても敬遠されてしまいます。
現場の空気を読む力は、経験を積むことで自然と身についていきます。最初はわからなくても、焦らず、周囲をよく観察しながら、少しずつ学んでいきましょう。
新人モデルがやりがちなNG行動
ここまで、撮影現場で求められるマナーや信頼される行動についてお話ししてきました。でも、頭ではわかっていても、実際の現場では緊張や焦りから、ついやってしまいがちなNG行動があります。私自身も新人の頃に失敗した経験がありますし、編集者として現場に立ち会う中で「これはもったいないな」と感じる場面も見てきました。
ここでは、新人モデルがやりがちなNG行動を具体的にご紹介します。自分が同じ失敗をしないように、ぜひ参考にしてください。
無断で撮影中の様子を撮る
これは本当によくある失敗です。「現場の雰囲気が素敵だから記念に撮りたい」「SNSでシェアしたい」という気持ちはわかります。でも、許可なく撮影してしまうと、大きなトラブルになる可能性があります。
私が新人だった頃、先輩モデルが撮影風景をスマホで撮影してSNSに投稿してしまい、クライアントから厳重注意を受けたことがありました。その投稿には、まだ発表前の新商品が写り込んでいたのです。結果として、その先輩は二度とそのブランドの仕事に呼ばれなくなってしまいました。
撮影現場では、必ず「撮影してもいいですか?」「SNSに投稿してもいいですか?」と確認する習慣をつけましょう。許可が出ても、商品や他の人の顔が写らないように配慮することが大切です。
私語やスマホいじりが多い
撮影には待ち時間がつきものです。照明の調整や、他のモデルの撮影中など、自分の出番を待つ時間は意外と長いものです。でも、その時間にスタッフ同士で私語をしたり、スマホばかりいじったりしていると、「やる気がない」「集中していない」と思われてしまいます。
私が以前、ある撮影現場で見かけたのは、待ち時間中にずっとスマホでゲームをしていた新人モデルさんでした。急にディレクターから「ちょっとこのポーズ試してみて」と声がかかったのですが、その方はスマホに夢中で気づかず、周りのスタッフが声をかけてようやく反応したんです。その後、そのモデルさんが次の仕事に呼ばれることはありませんでした。
待ち時間は、他のモデルの撮影を見て学んだり、現場の流れを観察したりする貴重な時間です。スマホは最小限にして、常に「次は自分の番かもしれない」という意識を持ちましょう。
スタッフへのタメ口・敬語ミス
これは意外と多いNG行動です。特に、自分と年齢が近いスタッフや、フランクな雰囲気の現場では、ついタメ口になってしまうことがあります。でも、どんなに親しみやすい雰囲気でも、基本は敬語です。
私も学生時代、撮影現場で自分より少し年上のカメラマンと仲良くなり、ついタメ口で話してしまったことがありました。その時、マネージャーから「どんなに仲良くなっても、仕事の場では敬語を使いなさい」と注意されました。親しさと礼儀は別物なんです。
もちろん、相手から「タメ口でいいよ」と言われることもあるでしょう。でも、それでも基本は敬語を崩さない方が無難です。特にクライアントやディレクターには、必ず丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
服や靴を雑に扱う
撮影で使用する衣装や靴は、多くの場合ブランドから借りている大切な商品です。それを床に置いたり、雑に扱ったりするのは、ブランドへの敬意が足りないと思われてしまいます。
私が編集者として立ち会った撮影で、新人モデルさんが借りた靴を脱ぎっぱなしにして、バラバラに置いていたことがありました。スタイリストの方が何も言わずに靴を揃えていましたが、その表情からは「残念だな」という気持ちが伝わってきました。
衣装はハンガーにかける、靴は揃えて置く、アクセサリーは指定された場所に丁寧に戻す――こうした基本的な扱い方を守るだけで、「この人は物を大切にする人だ」と思ってもらえます。ブランドやクライアントへの敬意を、行動で示すことが大切です。
指示待ち姿勢で、自主的に動かない
撮影現場では、指示を待つだけでなく、自分から動く姿勢も求められます。「次は何をすればいいですか?」と聞くのは悪いことではありませんが、ずっと指示待ちでいると、「受け身すぎる」「積極性がない」と思われてしまいます。
私がモデルをしていた頃、ある先輩から「現場では、次に何が必要かを考えて動く癖をつけなさい」と言われました。例えば、衣装チェンジの時間が近づいてきたら、自分から「そろそろ着替えますか?」と声をかける。撮影が一段落したら、「何かお手伝いできることはありますか?」と聞いてみる。こうした小さな積極性が、プロ意識の表れになります。
もちろん、勝手に動きすぎて現場を混乱させるのも良くありません。大切なのは、現場の空気を読みながら、適度に自分から動く姿勢を持つことです。「この人は気が利くな」と思ってもらえれば、次の仕事につながる可能性がグッと高まります。
現場で活かせる!元モデルの私が実践している心得

ここまで、撮影現場でのマナーや信頼される行動、NG行動についてお話ししてきました。最後に、元モデルで現在は編集者としても現場に立ち会う機会の多い私が、今も実践している心得をお伝えします。
「現場に入る=作品づくりの一員になる」意識
私は今、編集者として撮影現場に立ち会うことが多いのですが、モデル時代に学んだマナーは今でも本当に役立っています。特に大切にしているのは、「現場に入る=作品づくりの一員になる」という意識です。
撮影は、自分一人のためのものではありません。カメラマン、ディレクター、スタイリスト、クライアント――みんなで一つの作品を作り上げているのです。自分はその中の一部であり、全体がうまく回るように貢献することが求められます。
副業でモデルをするときも、この意識は変わりません。エステサロンの撮影でも、アパレルブランドの撮影でも、「この写真がどう使われるのか」「クライアントは何を求めているのか」を常に考えながら動くようにしています。そうすることで、自然と現場で求められる行動が見えてくるんです。
呼吸を整えて落ち着く、感謝を忘れない、最後まで笑顔
撮影現場では、緊張することもあるでしょう。特に新人のうちは、何をすればいいのかわからなくて、不安になることも多いと思います。そんなときは、まず深呼吸をして、呼吸を整えることが大切です。
私も撮影前には必ず、静かな場所で深呼吸をする習慣をつけています。呼吸を整えることで、心が落ち着き、表情も自然になります。緊張していると顔がこわばってしまいますが、呼吸を意識するだけで、リラックスした表情が作れるようになるんです。
そして、現場では常に「感謝の気持ちを忘れず」にいることを心がけています。撮影の機会をいただけること、プロのスタッフの方々と一緒に仕事ができること――これはすべて当たり前ではなく、ありがたいことです。その気持ちを忘れずにいると、自然と謙虚な姿勢になり、周囲への配慮もできるようになります。
最後まで笑顔でいることも、私が大切にしている心得の一つです。撮影が長引いて疲れてきても、最後まで笑顔を絶やさないことで、現場の雰囲気を明るく保つことができます。「最後まで笑顔で頑張ってくれた」という印象は、次の仕事につながる大きなポイントになります。
「もう一度お願いしたい」と思われるモデルになるために
芸能界やファッション業界は、本当に狭い世界です。一度「この人とは仕事がしやすい」と思ってもらえれば、次の仕事に声がかかりやすくなります。逆に、「マナーがなっていない」「現場で困らせた」という印象を持たれてしまうと、なかなか次のチャンスは来ません。
私がモデルとして活動していた頃、あるカメラマンから「香織ちゃんはまた一緒に仕事をしたいと思えるモデルだよ」と言っていただいたことがありました。その言葉がとても嬉しくて、今でも忘れられません。技術や容姿以上に、「人として一緒に仕事をしたい」と思ってもらえることが、どれほど大切かを実感しました。
副業でモデルをしている今も、その気持ちは変わりません。「もう一度お願いしたい」と思われるモデルになるためには、マナーを守り、現場の空気を読み、感謝の気持ちを忘れずにいることが何よりも大切です。
あなたも、一つ一つの撮影を大切にして、丁寧に向き合っていってください。その積み重ねが、必ず次のチャンスにつながります。
まとめ
モデルの現場マナーは、技術や容姿以上に「人としての姿勢」が問われるものです。挨拶、時間厳守、気配り、コミュニケーション――どれも当たり前のことのように感じるかもしれませんが、この当たり前をしっかりと実践できるかどうかが、プロとして評価されるかどうかの分かれ目になります。
芸能界やファッション業界は、想像以上に狭い世界です。「この人はマナーがしっかりしている」「現場で気持ちよく仕事ができる」という評判は、あっという間に広がります。逆に、一度信用を失ってしまうと、取り戻すのは本当に難しいのです。
でも、怖がる必要はありません。小さな気配りを積み重ねていけば、必ず周囲の人に伝わります。撮影現場では、緊張することもあるでしょう。失敗することもあるかもしれません。でも、そのたびに学び、次に活かしていけばいいのです。
私自身、モデルとして活動していた頃に学んだマナーは、今の仕事にも本当に役立っています。編集者として、ライターとして、そして副業でモデルとして――どんな立場でも、現場での振る舞いが信頼につながることを実感しています。
あなたも、一つ一つの撮影現場を大切にして、「また一緒に仕事をしたい」と思われるモデルを目指してください。丁寧に、誠実に、感謝の気持ちを忘れずに――その姿勢が、必ず次のチャンスを引き寄せます。
撮影現場は、緊張する場所ではなく、たくさんのプロフェッショナルと一緒に作品を作り上げる、ワクワクする場所です。マナーをしっかり身につけて、自信を持って現場に立ってくださいね。あなたの活躍を、心から応援しています。